私たちの日常には本当にかけがえのない最高な日があり、また、本当にくそみたいな日がある。
そして「今日は間違いなくくそみたいな日になるだろう」という日もあったりする。
まさに、バイトデイの今日はそんな日になる予感がした。
しかし、そんな1日を終えて新発見があった。
「今日は間違いなく、くそみたいな日になるだろうと思って過ごしてみれば案外そうでもなかった日」であった。
家を出る前のいささかの勇気を返せェェ!
◯
昨日のような楽しい毎日が続くはずがない。嬉しいことがあれば最悪なことが起きる。
それはもう小学生の頃に気づいてしまった。
何者が決めたのか、この世の中はそんなシーソーのようなバランスが絶対的にあり、その中で日々一喜一憂が生まれている。
不思議な話だ。
嫌だなあって思う人が少し痛い目にあって「ざま〜!!!!!」なんて思っていると、何かで頭をぶったり、何かに躓いちゃったりする。
これは神が決めたことなのか。または、生まれた言葉が影響を及ぼしているのか。
それなのに、今日は本当に実の値から+にも−にも動かぬような、ただただ寒い日であった。
もう21時になったが、特に良いことも無ければ悪いこともない。
ならば…!?
私はひらめいた。
プラスもマイナスも今日。今から良いコトをしまくれば、今日は「異常に良いことをやった日」のままに1日が終わるのだ。
そうならば、今のうちに良いコトをしまくり、今後のためにも貯蓄をしまくるのだ。
そう、まさに今からの時間は、良い人フィーバータイムなのだ!!!!
よし、残業をしよう。
◯
深夜になる前に上がりのはずだったが、その時間以降ワンオペになるのだが、一人で捌くには流石にしんどそうな境遇であった。
そう、私は「イイ人」になり放題の局面に場が達していたのだ。
しかし「おれも残業するよ」なんてことは口にしない。
「あれ?あの人もう上がりの時間だよな?え、でも手伝ってくれている…。なんて良い人なんだ…。」
これを狙おう!!!!!!!
人生、良いこともあれば悪いこともある。
良いことを今のうちに貯金した分、きっとここ数ヶ月は神や言葉もバランスを取るよう悪い事態は減ることだろう!!
さあ、いざイイ人になり放題のフィーバータイムへ!!!!!!!!
◯
指の先の感覚もなくなりかける夜23時、やっと落ち着いてきて、自分のシメの作業をする。
本来ワンオペの彼とは話すタイミングもなく、順調に遠巻きから「あれ?まだ残ってくれてるのかな?」というオーラをびんびんに感じ、段取り通り作戦をここまで進めることができている。
さあ、大事なのは次にすれ違うタイミングだ。
テメェよ、欲しがりすぎるんじゃないぞ。
顔に全く出すんじゃないぞ。
あくまで飄々としていろよ。
あの曲がり角から足音が聞こえる。
さあ、くるぞ ───
「あ!土屋さんがこの時間まで残ってくれてなかったら…
まっじで助かりました。(花が綻ぶような笑みで)」
キタァァァァァァァァァァァァァァァァァ。
I am a イイ人!!!!!!!!!!!!!
すでに欲が出てしまった。
「補充もちょっとやっといたよ!」
「えぇ…、まじっすか。ほんと助かります…」
気持ちイイイイイイイイイイイイ。
良いこと、最高ーーーーーーーーーー!!!
それから、年末年始の話などしながら私は帰る準備をした。
マスクを外した彼を見たのも初めてだった。
私がもし死んだ時、その走馬灯のワンシーンにあの彼の笑がスローモーションで流れることであろう。
イイ人ハイになった私は、その軽い足取りのまま颯爽と海底こと部屋に到着した。
あ!そういえばこの間イベントの抽選に応募したんだった!と当落を開くとすぐさま目に入った「残念ですが」──
うそおおおおおおん。
え、神さま?見てたかなあ??
やめてよぉ〜、ここまできてもバランス調整するのそろそろダサいぜ〜?
何とかなんねえかな〜??
何とかならない。
それが私たちの生きる日常なのだ。
しかし、そんな中でも一人の青年の何とかならないを手伝うことはできるのだ。
みんなも、時にはイイ人ハイに入ることをおすすめするぜ。
まあ、無粋な域には達するんじゃないぞ。
今日の私をお手本としてくれ。じゃあ元気でな。